人相術辞典       【は】

『人相術辞典   天童観相塾より』         【は】

 

〔擺膝〕          (はいしつ)。       『擺膝はヒザを開くガニマタ形、 坐(座)っては還(ま)た偏る。  男女に拘らず多くは淫乱。   少実多虚なるに心は湛然(たんぜん)』   男女共に淫乱で、 実が少なく虚が多く、 それを気にすることもない。  

〔擺手揺頭〕             (はいしゅようとう)。    『擺手揺頭なるは、 詭濫(きらん)刑夫の婦なり』    「擺手とは常に手を左右に突張る如く、 胴体より左右に離し居る也、  ソレは大抵擺指をもかぬるもの多し。  揺頭は頭部を妄りに左右に或は土幼(ひね)りて揺(ゆる)がすクセあるもの、 それは濫(みだ)りに詭言(うそ)をつきデタラメを語り、 また夫を刑する婦女であると。   婦は箒を持つ女、  家庭の女であり妻女である、  時に持てる箒で夫をゴミの如く掃き去ることもある也」  

〔背脊成坑〕            (はいせきあなをなす)。     『背脊の坑を成せるは、  号して虚花無寿と曰ふ』    「背脊成坑とは背すじの中心がペコンと陥没して坑道(こうどう)の如くなれるもの、  上より下まで一尺二寸以上もあるものは勿論、  或は上部或は中下に45寸位の坑あるものは、  男女に係らず虚花無寿なりと、   虚花(きょか)とはムダ花の意、  事業はムダ仕事ばかりでいつも成功せず、  子供(の場合)は虚弱で成人せず 或は成人するも役には立たぬものに成る、  ツマリ其の人が虚花であるからだといふ」  背骨が落ち窪んでいるもの。   全体もあれば部分的なものもある。   坑とはU字に落ち窪むこと。   背骨がズレている証拠であるから、  鍼灸や整体で調整する必要がある。 

〔背負〕           (はいふ)。   後姿。    背面の相。 

〔馬眼〕             (ばがん)。   馬睛(ばせい)、  馬目(ばもく)。      『皮は寛かにして三角あり露なる睜睛。  終日愁なきに涙し堂を濕(湿)ほす。  面は痩せ皮のハれるは真に嘆ずべし。  妻を刑し子を剋して又た奔忙す』     (評訳)     「眼蓋(まぶた)の皮は寛(ゆるや)かにあり、   上瞼は前方に多少はり出す如き趣きあるのに、 上瞼に三角形ができる、  露睜睛(ろせいせい)とは白黒の眼肉全体が露になる傾向があると也。   (睜は眼をみはる意味)。    平素別に愁ひごともないのに涙が出て、 堂(どう)は眼堂、  乃ち目をぬらす、  語をかへていへば涙っぽい目づかひをすること。    面は痩せてるのにその面の皮は鼓(つづみ)の革をハった様に余地なく引っ張れてるやうなのは、 コレは馬なれば名馬の相なれども、  人間に於いては真に嘆(たん)ずべきものである。    さういふ様なのは、  妻を刑し子を剋し又たその生活ぶりは常に忙しく奔(はし)りまはる、  それが運でもあり、  またそれが適する性分である」 

『馬目は神痴(しんち)にして色又昏(くら)し。     人となり拗強(ようきょう)ならば必らず沈淪(ちんりん)す。  平生自ら是れ心力を労す。   多くは天涯にあり苦辛に役(えき)せむ』      (評訳)    「馬目は黒目の神(しん・眼光)がバカのようで眼中の色(様子)も昏く見える。   人となりとは性質風格の全体特徴、  拗強はヒネクレで強情、  その様な性質がつヾく様なら人には相手にされず、  運命微弱にして沈淪おちぶれるであらう。   平生の生活は自然に心神や身力を労することが多い。   天涯は天のはて、  生れ故郷を離れて遠方に行く形容、  その思ひもよらぬ遠方で苦労貧乏しつヽ働かねばならぬ」 

『馬目なるは辛苦し奔馳(ほんち)す』     『馬目は大にして明ならず、  多くは角(かど)あり上下の瞼、 物を視るに痴拘(ちく)の皃(ぼう・貌)にも似たり。  此の人衣食は須らく足るべし、 生平に必らず苦労多しと』      (評訳)   「明ならずとは黒白(こくびゃく)不明の略、  馬目なるものは眼形が大きいばかりで、 黒白(光彩と白部)の境目には濁気があって鮮明ではない。  多く角ありとは、  多数の馬属中には目に三角なきものもあると同様に、 人間の馬目なるにも角なきものがあるので、  特に多くといふ。  上下の瞼といふも下瞼にも角あるものは、 人間には稀にあるのみ。  馬は三角ある位が名馬なのであるが、 人の馬目には三角なきはまだしも宜き方。    痴拘の皃とはバカの様な目つきで他を見つゝ身をかヾめること、  馬にこのクセあるもの多く、  馬目の人間にもその様なのが多い。   衣食須(すべか)らく足るべしとは、   生活が十分だといふわけではない、  食ったり着たりだけは先づ兎に角だが、  平生に苦労がたえないとなり、    須の字はスベカラクと暫くと両様の意がある」     「眼裂は大なる方、 多く上瞼に角形あり所謂三角目に見えゆるものなれども、  下瞼にも角形あるものもある、   これは、 馬には上等なれども人間には不可。   眼睛中に虹彩なき様に見え却りて紛点の如きもの多くあるを見る、  これは人により多少の差あり、  球(眼球)は少しく下向きにして茶褐色又は黒なるも駻(かん・暴れ馬)高の人は黄なるが多し。  眼尾の方に白眼の露(白眼が露出)なることあり、   上瞼の尾部に険しき相見ゆるものあり。  眼球急々にせはしく左右に動くものは、 殊(とく)に自分勝手にて薄情なるもの也。   馬眼のものは多く働けども終生蓄財なく又た得を蘊(つ)むこともなし、   馬は陽なれども淫獣にして馬眼なるは、  男女ともに性器大にして意外の淫欲家、  若き内は淫癖に陥ることあり」

〔白〕         (はく)。  「白は白い目乃ち白眼のこと。   白眼のことを睨む意にいふのは、 晋の阮籍(げんせき)が気に入らぬ士に会ふときは、 眼を見開いて白眼がちの目をして迎へ、  好きな人を見るときは目を細めて目尻を下げて会った、  乃ち青眼 クロ眼勝ちの目で向へといふ、  この故事から青眼 白眼といふ字が派生した、 これが白眼がニラムの義の初めだといふ。    霊樞経には白眼は気の精なるものといったとある」 

〔齦膘唇披〕           (はぐきはれくちびるひらく)。       『死せること九州に在るは、  蓋し謂ふ齦膘(ただ)れ唇披けばなりと』  齦(ぎん)膘(は)れとは歯齦(はぐき)がタダレムクミたる様に張れたること、  唇披(くちびるひらく)は唇掀に同じく動(やゝ)もすれば唇まき上がって歯が見えている者は、 どこで死ぬか分からないような運命だ。 

〔筋若蚯蚓〕              (きんみみずのごとき)。     『筋もし蟠蚓(ミミズ)の若(ごと)きは、 定めて少には問あれども厄多し』    「筋は浮筋をいふ、  色は青ばかりとは限らず茶も黒も紅もあり肉色もある也。   横鬂、 手甲、 頸項、 膝下の側面付近等、 その他各所に蚓(ミゝヅ)の蟠居する如き趣に出づる也。  只だ静脈の浮筋として数本あるは蟠蚓といふほどにはあらず、  蚓蟠は縦横に絡み合ふ如き状なるをいふ。   定めて少(わか)い内だけ少しは閑雅であらうが、 厄難が多いだろうと也」  青筋が浮いて縺れたように現れたのを云う。  蟠はわだかまる、 曲がる、 とぐろを巻くなどの意味。   

〔白気如紛〕           (はっきふんのごとし)。  白い気色が皮膚上に浮いて現れる状態。  白紛(おしろい)、 テンカフを振り掛けたように現れる様。  ガラスに息を吹きかけたようにボーッと白く現れる様。  白い気色に限らず、  気色は皮膚上に浮いたように現れる。   血色は皮膚の色。   『白気あり紛の如きは、 父母に刑傷あり』   額中央の左右にある父母宮に白気が現れたなら、  父母に不幸なりしかふぼの忌日に冥福を祈らぬか也、  各々その年齢によりて考ふべし、  少年にも老年にもあり」  

〔白青〕            (はくせい)。    白と青の混合色。   

〔膚渋少光〕          (はだえしぶくひかりすくなし)。      『膚渋く光り少なきは、  終に安逸なし』     「皮膚の触感ザラザラと渋滞(じゅうたい)あり、  光沢少なき人は終生安逸なるは能(あた)はずと也」   

〔八学堂〕           (はちがくどう)。      『第一、 高明部学堂。  頭円(まる)く或は異骨ありて昂(たか)し。   第二、 高広部学堂、 額角明潤にして骨起こりて方(ほう・四角)なり。   第三、 光大部学堂。  印堂平明にして痕傷無し。   第四、 明秀部学堂。   眼光あり黒多く神を隠蔵す。  第五、 聡明部学堂。  耳に輪郭有りて(その色は)紅白黄。   第六、 忠信部学堂。  歯斉(ととの)ひ周密にして白きこと霜の如し。   第七、 広徳部学堂。  舌長く準(せつ・鼻の先)に至り紅にして且つ方(ほう・幅広)なり。    第八、 班笋(はんしゅん・筍)部学堂。   天中に起こりて横たはる、  細秀にして長し(額の生え際が起こって横に長いこと)』  

〔髪際〕           (はっさい)。    額の髪の生え際。     『髪際印堂は、 周(めぐ)りて維(こ)れ百歳』     「髪際印堂は一周して維れはたヾ改めて百歳始めて勘定する」      流年は額の生え際を百歳勘定する。   但し、  流年法には数々あるから研究が必要。    

〔髪際低皮膚粗〕            (はっさいひくくひふそ)。     生え際が低くとは額が狭いこと。    そして皮膚が粗ければ愚頑である。   片意地のこと。   職人に多い相。   

〔髪際圧遮〕            (はっさいあっしゃ)。    『髪際の圧遮あるは、  定めて是れ弧刑の子』    「髪際は頭の生え際、  それの圧遮とはつまり額の狭少なることをいふ、   それは定めて弧刑の子であらう、  孤刑とは本人が死ぬか親が死ぬか、 本人が他人の処へやらるゝか、 どうせろくなことはない子であると也。  金較剪(きんこうせん)では過房養育の子だといって居る」   金較剪は人相術の書名。  

〔髪鬢粗濃〕           (はつびんそのう)。     『髪鬢の粗濃なるは、 労苦あり終には貧賤とならむ』   「髪鬢低く乱れ濁りて粗濃なる者は辛苦あり」   髪も太く粗く濃い者は、  苦労ばかりで貧乏する。   

〔髪鬢濃重〕         (はつびんのうじゅう)。       『髪と鬢の濃重なるは、  道的に合うの貌(かたち)、   声に響きあれば初に栄あり』     「髪鬢が重いほど濃いものは、 ピッタリ道者向に適合した相貌であるから、 その上声よく響あれば初主初年、乃ち早い頃がら出世する   初は初主初年」 

〔鼻〕         (はな)。   委しくは審辨官の項にあり。       「鼻は天の五星では土星に當るが、  また肺の竅(きょう・穴)でもあり権利の主張得喪を司る、  金財を得るの力である、  鼻勢の強からぬものが常に貧乏するのはこの故である。 形の正歪(せいわい)大小が重要なる決勝点となる、  この点に於いては金星の精ともみらるヽが、 金星は已(すで)に耳にあり、  耳が金徳を代表し、  鼻は其の果端を収むる、  耳と鼻との因果関係がソコにある。   鼻梁の長いユダヤはベニスの金貸しのやうに、  権利の主張のためには人肉をでも要求する。   貸金のカタに娘を連れて行く強欲非道の輩は、  大抵鼻が高いか梁(りょう・鼻梁はなすじ)が長いか、 正哉(まさか)に前にいった象ほどのことでもあるまいが、 鼻梁が垂れ下がってる程なのは意外に深刻な執拗さがあり、  その傾向は多い方である。   故に準頭(せっとう)には怪部(かいぶ)の名がつけられてある、  怪部の名については種々怪しい解(解説)がある」    五岳の中岳。   三停では中停の主。   五官では審辨官。  十二宮の財。  土星。   肺の霊苗。  上から印堂、 山根、 年上、 寿上、 準頭、 金甲の部位あり。  

〔鼻及財星〕            (はなはすなわちざいせい)。      『鼻は乃ち財星にして、  中年の造化を管す』    鼻を財星と言い、 財運と中年の運命を支配する。  顔面中央に座して自我の強弱を表す。   中岳を君とし回りの四岳を臣とする。  

〔鼻有三凹〕            (はなにさんおうある)。     『鼻に三凹あるは、  必ず貧窮にして孤苦なり』    「(三凹とは)鼻のスジに段々がある、  三という数の内容には餘り拘はる必要はない。    三段でも四段又は二段でも」    鼻筋に指先で押したような窪みがある場合も取る。    貧窮で孤独で苦労が多い相。  

〔鼻帯両凹〕            (はなのりょうおうをおぶる)。      『鼻に両凹を帯ぶるは、破財あり疾苦せむ』   「鼻梁を中心にハナに二ヶ所の凹陥を生ずる也、   『鼻に三凹ある』とは全くの別物、   『鼻に三曲』とも関係なし、  鼻は財星にして疾厄(室厄宮)なる故に缺陥(けっかん)あれば破財疾苦は必然的なり」    大抵は鼻に指で押したような窪みがあるが、 多くは中年に破財疾苦がある相。  

〔鼻有三曲〕           (はなにさんきょくる)。      『鼻に三曲あるは、 屋(いえ)を売らずんば則ち田を売らむ』     「正面より見るに鼻の左右に屈曲あること三ある也、   必らずしも三の数に拘はる要なし、  二曲にても一曲にても可、 それは破産の相にて田地田甫(たんぼ)家屋家財を売り、 祖先伝来の家を逃げ出す也」鼻が左右に曲がりくねっているのは、 中年に失敗して破産する相。 

〔鼻若竈門〕             (はなそうもんのごとき)。      『鼻若(も)し竈門の若きは、 家財罄盡(けいじん)せむ』     「鼻孔が全面より全露に見ゆるを竈門に喩へていふ、  罄(けい)は傾(けい)なりまた空しき也、  ソレは家財が空しく傾き盡(つく)すといふ。  男女とも貧乏するなり」    鼻は財星。  竈門とは鼻の穴を竈の口に見立ててのこと。   罄盡は罄尽。  

〔鼻尖額低〕           (はなとがりひたいひくき)。        『鼻尖り額の低きは、  終には侍妾(じしょう)たらむ』     「鼻のみツンと尖りて細形な、  そして額のせまい髪際の低く迫った女は、  終には侍妾は妾か酌婦かパンパンかその他接客婦の類」 侍は侍(はべ)る。   

〔鼻痩面肥〕           (はなやせめんこえる)。    『鼻痩せ面の肥えたるは、  半世の財終には耗散せむ』     「鼻の痩せあり面肉の肥ゆるものもまた半世位は貧乏する也、  半世は一生対聯(たいれん)、必ずしも数量には係らず」  前句に『面大にして鼻の小なるは、 一生常に自ら艱辛あり』 の一生にして半世と云う。

〔馬面蛇睛〕           (ばめんだせい)。       『馬面にして蛇睛なるは、 須らく横死に遭はむ』    「馬面は普通に単に長顔を言いひて済ませども、 然し正確に詳細にいへば第一に長顔、 第二に額部割合に狭小、 第三に眼は左右に隔離すること多し、 第四に眼形には三角あり、 第五に鼻竅(びきょう)大にして露、  第六に口は割合下方に付く、  第七口形は馬口。 以上の内三個以上の要件を具有するものは馬面馬相とす。  全備のものは勿論真の馬顔とす。  終生労して効なき也」     「蛇睛は眼裂長大、  眼形楕円小判型にして拡大、 睛に赤味あるか、 睛の周囲に赤目ざしあるか赤線あるか也、 白中には青味あり水淫性にして一見ギョロリといふ感あり、 勿論睛は露たり又た眼眥(がんせい)張目の趣もあり、 それらの要件の一二の缺欠はあるも蛇睛といふべし」    「馬面にはあらずして蛇睛のみなるは小判財宝に縁あり、  若干の金持ちとなることあり、  其の性粗にして心毒あり兄弟義ならず、 馬面を兼ぬるものは卒には横禍に遇ひ死の難あるに至るのも也」   

〔波紋〕           (はもん)。     眼の上、 眼の下の波。  眼波(がんぱ)。 「眼の上下の波紋といふは、 上下の目ぶちにある波形なる線、 二皮目の副線をふくめて称す」 

〔歯如榴子〕             (はのりゅうしのごとき)。   『歯の榴子の如きは、 衣食豊盈なり』    「榴子とは石榴(ざくろ)の実の如く、 歯列のギシギシと並列してスキなきこと也。  その如きものは男女に係らず、 衣食豊盈であると」     豊盈(ほうえい)とは豊かに盈(みちる)こと。 

〔反耳〕            (はんび)。    「耳反るとは耳が内から外へ零れ、 耳輪が後方に翻転するか、 耳輪なきが如きものをいふ」  耳の郭が飛び出ていること。  正面から見ると良く分かる。      『額尖り耳の反れるは、  三嫁すと雖も而も未だ休まず』    額がオデコで反耳の女は、 三回嫁いでも納まるまいという意味。  後家相の一つ。