人相術辞典   【そ】

『人相術辞典  天童観相塾より』      【そ】

 

〔相〕     (そう)。   

〔竈仰天撩〕      (そうあおぎてんをつかむ)。    『竈仰ぎて天を撩(つか)むは、  中限には破敗あり田園は耗散せむ』    「竈は鼻孔の一名、  灶上(そうじょう)などともいふ。  撩の手ヘンはツカム即ち天をツカム、  鼻孔が天をつかまんとする気勢あるをいへり。   鼻孔のダラシなく天上向きのものは、  出タラメ話ラッパ吹きにて大事な秘密は保てぬと也。    ソレは中年には破産敗財があり家庭を破壊し田園を売りつくし一文なしになって了ふと也」 

〔相格〕       (そうかく)。     「或る条件の相として具備する場合にいふ」    例えば貴相格、 威相格、 木形格、 火形格、 などと云うのがこれに当たる。 

〔相格に入る〕      (そうかくにいる)。     相格に当てはまること。 

〔象眼〕      (ぞうがん)。   象目(ぞうもく)。      『上下に波紋ありて秀気多し。     波長く眼の細きは亦(ま)た仁和す。   時に及んでは富貴皆な妙たり。 遐算清平楽しみ且つ歌ふ』         (評訳)   「眼の上下には波紋があって、  眼中の秀気が多い。   上下の波紋といふは、 上下の目ぶちにある波形なる線、 二皮目(ふたかわめ)の副線をふくめて称す。     秀気とは其の線形スッキリと美しく見え濁気など無之(これなく)、  また眼中の美しきこと」    「眼波が長く眼が細いのは仁の心が深く、  他との調和性がある。    亦の字は肉間の意で性器など宜しと也。   目は女(め)也、    性器の表徴」   「時が来れば富貴となり、 万事好都合に行かう。 及時とは大体廿五六才より三十位までの運限(うんげん・運の区切り)、   その頃になればと也。    は妙に同じ意なれども、 少(わか)くして玄(げん)なり、  乃ち白人(しろうと)ばなれが仕ており、  万事ものなれた様子だと也。    妙は少き女の状態のアレのこと也。   遐算は長生きの一生涯、  清平は清安平和の略、   且(かつ)はまた也、  普通は男根にいふも、   男女とも老年まで性根つよき方なり、  ナベヅル(なべづる形の眼)も此の点は似て居る」    

『象目は鈍濁にして専ならず』      (評訳)   専は純一不離をいふ、   また専横の略、   不専はソウではない、   我がまヽではなく柔和だが濁気が多いとなり。  

『象目なるは頭大にして身肥え、 眼小にして神(しん)昏(くら)し、 行々下を視、  人となり多く混濁あり、  自から専ならず人に駆使せらるヽを愛す』     (評訳)  行々はユックリ歩行する場合はいつも下を向く傾がある。    人がらは混濁は多いが自然に専横なことはなく柔和で、  人に駆使せらるヽを好むと。   乃ち愛人に駆使せらるヽ方なり」 

『象目は身肥え主(た)だ痴なるに似たり。   神は昏く眼は下視し如(も)しくは迷ふ。    一生の作事多くは沈重す。   他人に向随して東し、 復た西す』    (評訳)  象目である様な人は大抵身体は肥り気味なもの、  生の字は只だとよむのだが、 生来(生まれつき)の意、 生まれながらの風恰好がバカ見たいだ。   眼中が昏くその眼は常に下を見るクセがあり、  迷妄の気分がある。   一生涯の間なすことすること皆な多く沈重な方だ。   他人といっても全然知らぬ赤の他人といふわけではない、   自分以外の何人(なんびと)かの意志に従って或は東にも西にも行くと也」       「眼裂細長型にして(目形は)前狭後広の形勢あり、  切れ長にして美しき眼なり、 眼尾(がんび・目尻)は一反は下降すれども末端ににて少しく上がる風趣(ふうしゅ)。   全長は長目なれども魚尾紋は長からぬが多し。   一種ナベヅル型は似て非なるものに多く、  前後眥(せい)急頓に細く曲がり付近にシワ出づ。    下賤の性にて意久地(いくぢ)なき卑屈な方、   悪は少なし。   眼球は正しく中央にあり、  上少なく下方に多く蔵(かくれ)る」   

〔双顴並起峯巒〕       (そうけんならびおこりてほうらん)。      『呼べば聚(あつま)り喝すれば散ずるは、 只だ双顴の並び起りて峯巒たるに因る』    (呼べば聚り喝すれば散ずとは)  威勢あることの形容」     「顴肉の豊に頬の方まで巒峯の如くにムックリ高なるをいふ、  只だ三角に突出したる如きは峰とはいふべし、   巒とはいふべからず、  呼聚喝散など思ひも及ばざる也」    

〔灶上〕     (そうじょう)。     鼻孔のこと。   

〔双絛〕      (そうとう)。   皺の一種。    「真田紐のごとき観あるもの」  

〔双絛項下〕        (そうとうのこうにくだる)。    『双絛』 は、 真田紐のような文様の皺が二本あること。    『項下』は首。    『双絛の項に下るは、 休咎に遇うふも、 愈々康強を見る』   双絛が首にある者は、 吉凶に遇うも愈々(いよいよ)健やかで丈夫である。   康強(こうきょう)。     「寿相格中に、 項下に皺あり絛の如き者は、  長寿の相なり。    双絛は妻と偕(とも)に老ゆ。    一絛なれば則ち弧なり」     「項絛といふは項下の絛の略語なり」    『双絛』 は顎の下から首の下まで縦に現れた二本の襞(ひだ)。    首を巻くように、 二本の真田紐のような紋があるとも解釈できる。   参考までに、  首を取り巻くように縄目の皺紋が現れたら縊死の相。 

〔双瞳〕      (そうどう)。     ひとみの左右か上下に丸い黒子などがあって、  瞳が二つあるように見えるもの。    俗書には重瞳と混同されることが多い。   覇者か大悪人の相と言われている。  

〔相中訣法〕        (そうちゅうのけっぽう)。     相法で決定すること。    『相中の訣法は、 寿夭を最も難しとす』    相法の中で最も難しいのは『寿夭』である。    長生きするか若死にか、 死ぬか生きるかの寿命の決定が最も難しいということ。    『独り人中のみのことにあらず。惟(た)だ神(しん)是を定』    寿夭はただ人中の相だけで決めてはならない。   神だけがこれを決定する。    人中に長い者は長生きするという見方がある。 

〔相貌宮〕      (そうぼうきゅう)。     『相貌は先づ五岳を観、 次いで三停の盈満を弁じ・・ 行座・鼻・地閣・水星・・ 』  人相全般を相貌宮と言う。 

〔鼠飧〕      (そそん)。  ネズミのような食べ方。    「鼠飧は少しづゝ度々に食し妄りに食ひ零(こぼ)しまた食しても足らずとする食いしんぼうの傾向あり」   「ソコヌケのワルでシミッタレだといふこと」

〔粗骨〕        (そこつ)。     『粗骨にして急皮なるは、 寿年短促す』      「骨格が野卑粗漏で、 皮膚が引っぱれたる様に見え肉に余裕なきを粗骨急皮といふ、  長生きはむつかしと也」

〔鼠眼・鼠目〕      (そがん・そもく)。       『鼠目は睛円にして睫毛長し。   低頭し偸頭(とうし)し意(おも)ふこと慌忙(こうぼう)。   更に看る作すこと多くは欺幣(ぎへい)。   盗を為すこと分明防ぐべからず』     (解説)   「鼠目なるは黒睛(こくせい・虹彩)円く飛び出し気味であり、 睫毛は長めの方。   頭首を低く垂れてはまたチラチラと人を偸み視(ぬすみみ)し、 その意中は却ってあわただしく忙がしい。   更(あらた)めて看る所ではその人の仕事は、 大抵ごまかしの仕事が多いとなり。   この人結局は盗人と為ることは分明、 到底ソレは防ぐことは出来まい」   

『眼光鼠の如きは、  偸盗(とうとう)の徒なるに似たり』    『鶏 鼠 猴 蛇 は奚(な)んぞ憑(よ)る可(べ)けん』    (解説)   「鼠眼のものは孤鼠(こそ)ドロ的傾向があり、 若(も)しくは低級で信用するにはあまりに足りない」      『獐頭(しょうとう)にして鼠目なるは、 何ぞ必ずしも官を求めん』    (解説)  「官公吏員には不向きだ」   

『鼠目は円小にして睛黒く、 若しくは漆(しっ)せるがごとく、  物を視ては必らず點頭(てんとう・頭を時々前後にうちふる)し、 人となり小利を見ては蓄財の性あり、 交結(こうけつ・交際結盟の略)は明らかならざれども機巧あること多し、  終には盗窃(とうせつ・窃盗)を為すに到る』      「目裂(もくれつ・目の長さ) 短小なる方にて尻上がりの傾向あり、 黒目は眼中一ぱいにあり、 黒目の或るものはトビ出しあるやの観もあり。   黒目には鋭光はなけれども黒き光沢はあり。   眼形は眼頭細く眼尾円くふくらみ、  眼尾は上づれ気味なり、  球は少し上向きにて突出す。  眼堂(がんどう・目全体)は少し上方円く出でヽ下胞は平也」