人相術辞典  【す】

『人相術辞典  天童観相塾より』      【す】

 

〔酔眼〕     すいがん。       『紅黄と混雑して却って流光。   酔うが如く痴に似て心昧昴(まいこう)。 女犯貪淫、 男は必らず夭す。   僧人道士にあるも亦(ま)た淫荒』      (評訳)  紅いすじ黄色い筋など眼中に混雑してあり乍(なが)ら、 却って黒目からはその光が流れ出る様に走り、  白目もビラビラと上光(うわびか)りが絶えない。    その眼は酔うたようでもあり痴なるにも似て居る、  そのクセ心は暗昧にクラク(暗く)昴(たか)ぶっているばかり。   新本乾隆本(けんりゅうぼん)には昧昴を昧良と訂正あり、   理由なし、  古原本には昧昴也。    心中昏昧にして昴(たか)ぶる見あるなり、   昂は気位に貴きことをいう。   妄りに女を引っ張り挑みかヽり淫を貪求(たんきゅう)し、 ソレが男の場合には必らず若死にする、    女は往来(オ~ライ)主義淫乱で身を果たす。    僧人や道士などにあるも亦た淫に荒ぶとあるが、この眼は僧人道士には却って多いものである、   彼等は内々で荒淫続行をやらかして居るからである      酒に酔いたるにあらずして酒に酔いたる如き眼をいう。    本来酒毒者の眼形はこれなるも、 已(すで)に酒毒者なる限り問ふ所にあらず、  酒家にあらざるものが此の如きは殊更ら、  勿論酒毒者もこの性命の範囲よりは免れず。    眼形は一定せざれども、   大体視ること茫然(ぼうぜん)たる如く且つ朦朧(もうろう)たり、  そのクセ眼睛は注視せんとするやの形勢あれども確かならず。    眼睫は清明を欠き、 瞼もまた美ならず、   眼尾はユルミて涙沱(るいだ)あるやの感あり。    眼睛露にはならざるもビラビラと光り流れる趣あり。   酔眼の人は長命ならず或は官罪刑剋あり、  この頃急に酔眼になりたる人は、 近視眼となる兆(きざし)故注意すべし。    これは酒家の遺伝あるもの也。    老人の眼には酔眼又は近きもの多し、   もし若きものにあらば必らず夭するなり。    尤も酔眼は酔顔の一部の要件ともなる也     酔ってもいないのに酔っているような目付きを酔眼という。    

〔水形之人〕      すいけいのひと。         『水形の人は流風ありて円満なり』      (評訳)  「水形の人は形柔らかく肥え太り、  流風円満ではあるが、    水は方円の器に従うので、  確然たる堅さはない、   色は黒い」  水の象。   大柄で肥え太り、 度量があり実業家向き。   海運業、 金融業、  その他大掛かりな仕事に適する。    

〔水局得金〕     すいきょくにしてきんをえる。       『水局にして金を得れば終には須らく快暢(かいちょう)なるべし』       (評訳)  水形の人で色が黒ければ水局と謂われるが、  それにドコかに金形分子が加はれば、  ソレは金生水であるから、  終には運命が快暢にならうというのである   水形の見本のような相を水局という。   それに金形の特徴が加味されたなら運命が強く順調な運命だという。  

〔水逢厚土〕      みずのこうどにあう。       『水は厚土に逢えば、 忽ち資材を破る』      (評訳)  水形の人が顔色が黄色いか、 田字面(でんじめん)か位の少しの土質にあっただけなら、  土は忽ち水に溶解され土の本質を失う、  溶の字は水が他物を包容する意からの合成字、  乃ち水が勝つのであるが、 骨格から肉の盈満から土質の方が勝てば、 大量の土に逢うて水は吸収されて負けて仕まう、   尚ほ堤防のやうな大厚土にあへば、  水は向いた方にも流れ得ずその本質実質を発揮出来ぬので、  水としての能力を失う。    土剋水なので忽ち資材を破る結果になるという

〔垂珠・垂殊〕       すいしゅ。     耳朶(みみたぶ)。   

〔出納官〕     すいとうかん。    『口は出納官。   唇が紅(くれない)で歯は白く、 両唇が斉(ひと)しく豊かに、  人中(にんちゅう・鼻の下の縦溝)が深く長く、 仰月口、  弯弓口、  四字口、  方口、  牛口、  龍口、  虎口、  など、 両唇が反(そりかえ)らず、 吊り上がらず、 尖らざるは、 これを「出納官の成る」 という。  唇が短く歯が露れ、 唇黒く唇皺み、 上唇薄く下唇反り、  髭(ひげ)が黄色で焦枯(か)れて粗濁なるは、  これを「出納官成らず」 という』

『口は四角張り大きいのがよい。    唇が紅く、 形が端正で厚く、  口角がハッキリしており、   弓のごとく口角が上がり、   開いては大きく、 ツムっては小さい、  これを「出納官の成る」 という』 

『唇が短く、 巻き上がり、  色が青く、  歯が露われ、 偏平なのは骨肉(肉親)が分離する。   大きくても形が不正なのは虚詐(いつわる)が多い。    偏平で薄いのは人を誹る。    鮮やかな朱色は名誉がある。  唇の裏が紫色なのは衣食が豊かで、 唇に縦紋が多いには善人。   食事にむせびノドに詰まらせるのは運が滞る。   口の両角が低垂しているのは貧相で人の恨みを受ける。    唇の中と上唇のホクロは酒食に縁があり。   口角のホクロは晩年に水難がある。    法令紋が口に入るのは餓死の相。   唇が紅色で潤いあれば貴く 黒い者は賤しい。   青と白は病気の相』

『口は言語と飲食の門である。   心の扉である。    人を褒め罰する所、   是非をいう所なり。   形が端正で厚く妄りに喋らず。   これを口徳という。   誹謗や多言を口賊という。    口が大きく稜(唇の境線が明瞭)あるのは寿命が長くて貴い。    形が弓のようであれば官(地位)禄(財)があり、 大きく厚いものは寿と富がある。 形正しく偏らず薄からずは衣食が豊かである。    四の字の富あり足る、   尖り反り返るは偏して薄きは孤独で賤しい。  物言わず口が動く馬の口のごときは飢餓。    火を吹くような口は孤独、  色が紫黒は運が滞り、 口に拳が入る者は出世相、  独り言は賤しい、   唇を口の城郭となし舌を口の鋒刃(ほうじん・やいば)となす。   城郭は厚きを欲し鋒刃は利(鋭い)を欲す。    舌大で口小は貧薄夭折。    口小で舌短くて貧。    色は紅を欲し、  言葉は清いのを欲す』 

〔水難〕     すいなん。     水に溺れる、  海や川への投身、  津波など、  水による一切の難儀。   

〔睡鳳眼〕     すいほうがん。       『平々たる瞻視は偏斜ならず。   笑へば和容を帯び秀気華やかなり。  天性人を容(ゆる)してまた量あり。  須(すべか)らく知るべし富貴足り誇るに堪ゆ』    (解説) 目づかいが平かで偏頗(へんぱ)になったり、 斜傾したりするやうなことはない。   自然の笑ひが顔中に和気をたヾよはせる、   目から起こる秀気が華やかにある。   その人の天性雅量があり、  気に入らぬ人の言行をでも我まんして容認する、   人の我がまヽをも容すのである。   富貴が相当にあって人に誇るに堪ゆるだけにあらうと也      「目尻の垂れたる鳳眼睡(ねむ)げなる趣、    満足の表現。   サカリ過ぎたる女の眼なり、   天蓋のウラ東方に一人居る天女の眼は睡鳳眼に書くが作法なり。   サカリ過ぎたる女の眼なり。   睡は目垂るヽ也、  上瞼タルミて覆ひ蓋(かぶ)さる如きの観、   眼形は概して細く見ゆ。  目尻一反は垂れて末端ハネ換え反る趣あるも、 大しては上らず。   眼は正視なるも球は少し下向きにて、 光は弱く流るゝ如し

〔瑞鳳眼〕    ずいほうがん。       『日月は分明にして両角(りょうかく)斉しく。   二波長く秀でヽ笑ふこと微々。   流るれども動かず神光の色。  翰苑(かんえん)にありて声名鳳池に達す』      (解説)  日月は左右の眼が均斉に黒白が分明である、  両角とは目の頭尾(目頭と目尻)の両角が斉しき角度にある也。  二波(には)とは眼の上下の眼波の長く秀づること、  そしてその笑ひはにっこりと少し笑(え)むだけ也。    眼光は流るヽやうなれども眼中は動かず眼神の光は美しい。   まだ学者の域を脱しないで翰苑にある頃から、 外部での評判がよく、  お終いには為政家となって鳳池は宮庭の異名、  廟堂に立って天下の政治を行ふに至るであらうと也    「鳳眼の上下膨(ふくれる・は)れぼったからぬ眼なり。   細長くすゞしき眼形。  水平にして正しけれども、  愛嬌には乏しき目也。   上眼瞼の目元によりたる方に少しの三角あり、   中央部は丸みなく平直なるが特色の一なり」