『人相術辞典 天童観相塾より』 【り】
〔六削〕 (りくさく)。 眉に毛無く、 額に角無く、 目に神無く、 鼻に鼻梁無く、 口に稜無く、 耳に輪なし、 以上の六つを六削と云う。 『三尖六削なるは、 縦(たと)へ奸功なりとも賎貧なり』 ずる賢く生きようとも、 賤しく貧乏する。
〔龍角〕 (りゅうかく)。 「(龍骨は)龍角に同じ、 龍角骨といふの略。 龍角は百三十部位にては天庭の左右にあり日月角に隣りす』 龍骨、 龍角骨と同じ。
〔龍眼〕 (りゅうがん)。 龍睛(りゅうせい)、 龍目(りゅうもく)。 『黒白は分明に神は精彩あり。 眼は大に波は長く気神蔵(かく)る。 此の如くば富貴は小可に非ず。 竟に能く禄を受けて明皇を輔(たす)けん』 (解説) 「黒目と白目との境目がハッキリし、 眼神には精彩がある美しく威厳に富む。 眼形は大型で眼波(がんぱ)が長く、 眼の気神が露出するやうな事なく、 含蔵(がんぞう)してある。 もしこの様ならば富貴は少しばかりのことではない。 小可(しょうか)はトルコの可汗尊称、 若い盛んな可汗の意、 転じて富貴勢力の形容、 可は特別よみにて入声十一陌の韻。 また小可(すこしばかり)ではないの意にも兼ねいふ。 小可の文字はトルコ語を支那(しな)語化して言へるもの也。 龍顔(りゅうがん)者は、 ついに能く禄を受けて明皇(めいこう)を補佐する役目となるであらうと也。 明皇とは一般的にいふ天子の美称。 『龍目には精神ありて世とは殊(こと)なる。 光芒ありて動かざること懸珠の若(ごと)し。 秋水寒潭凝然(ぎょうぜん)として静かなり。 自らこれ人間(じんかん)・天下の誉れ』 (解説) 龍目は眼中に精神力のあること、 世間なみのものに比してはまた格別なものがある。 光にチラチラとしたものがあり、 目玉の動かないことは二つ並べて下げた水晶の珠の、 光が尾を引くやう。 秋の水のやうに、 また寒中の潭(たん・淵)の水の如く、 スミ切って凝然ところ固まったのではないかと、 思へるほど静かだ。 こういふのは自然にこれ、 人間(じんかん)は人間そのものではなく、 人間世界のこと、 乃ち世間一般に傑出して天下の誉(ほ)めものになるに定(き)まっていると也」 『龍目は其の神に通ず』 (解説) 「神通力があるかの様に思へるほどである」 『龍目は懸珠の光芒(こうぼう)あるが若(ごと)く、 動かざること寒潭(かんたん)秋水(しゅうすい)の如く、 若(も)しくは神、 若しくは聖、 富貴あり、 名誉は天下に普(あま)ねし』 「リュウガンと読めば両眼龍眼と紛らわしきを以て、 リュウガンと特称す。 今の支那語(しなご)にてはロン、ゲンと呼ぶ。 眼裂(がんれつ)長く、 刮目(かつもく・カッと見開く)し、 眼尾は少しつり上がり気味也、 眼睫の尾部に近き辺に、 上下供に豊かに張りあり。 球は中央に在り、 刮目するときは四白殆ど全露せんばかりなるが、 上下瞼の中央部に水平に近き所あるため、 含蔵の域を外れず四白とも成らず。 側面より見る眼球は正直にあり、 眼波は長く睛は漆黒(しっこく)なり」
〔龍眼鳳頸〕 (りゅうがんほうけい)。 『龍顔』 は 「龍顔はリョウガンとは呼ばず両眼と聞え誤る虞あれば也。 また天子のお顔をいふときはリョウガンなるも、 単に顔形面貌にていふ場合はリュウガンといふ也。 顴(けん・頬骨)も頤も共に伸びやかに発達したる、 概形小判型に少しの圭角ある顔貌をいふ也」 龍顔は中国の高貴な美人画を参照。 『鳳頸』は 「頸顔のナダラカに細く、 又た撫で肩になりたる姿」 美しく長い頸(くび)を鳳の頸に譬えたもの。 『龍顔鳳頸、 女人は必ず君王に配す』 龍顔で鳳頸の女性は、 必ず妃となる。 玉の輿に乗る相の第一。
〔龍宮〕 (りゅうぐう)。 「眼下五分ばかりの部位、 龍は子孫繁殖の意。 宮はところ位置の義」 目頭を龍宮とする
〔龍宮低黒〕 (りゅうぐうていこく)。 『龍宮の低黒なるは、 嗣続得難くして或は愚昧なり』 「眼下五分ばかりの部位、 龍は子孫繫殖の意。 宮はところ位置の義、 龍子のある所なり。 低はその肉気の凹陥虚脱せるなり、 黒は黒色を帯ぶ、 其の如きものは子息なく或はあるも愚昧なるべしと也、 嗣続は子息なり」
〔龍行〕 (りゅうこう)。 「龍行は歩するに中身を動揺させぬをいふ、 何れも行動の気品ある形容」 『虎歩龍行、 劉裕は九重の位に至る』 高い身分に登る相。
〔龍骨挿天〕 (りゅうこつてんをはさむ)。 『龍骨の天を挿むは、 応(まさ)に宰輔と為るべし』 「(龍骨は)龍角に同じ、 龍角骨といふの略、 日月角のことにあらず、 龍角は百三十部位にては天庭の左右にあり日月角に隣りす。 挿天は龍角骨が発達して天庭を挿(はさ)むこと。 これ亦た大臣や次官位には成れるだらうと也」 天庭の左右の骨が高く、 天庭を挿む相は高官に登る相。 天庭を主君としてそれを左右から輔(たす)ける形。 宰輔(さいほ)は主君を補佐する立場。
〔流年法〕 (りゅうねんほう)。 〇歳は吉運、 〇歳は凶運、 というように判断するために、 人相に年齢を当てはめたもの。 研究次第で具体的判断が可能になる。 三主流年法、 飛び流年法、 五官流年法など、 主主の流年法がある。
〔龍脳〕 (りゅうのう)。 「龍脳とは龍の頭に見立てヽいふ頭形、 額部円大にぬけ上り、後頭は引き締まりて見ゆ、 額部円大になりとも脳水腫などは不可」 「鳳睛は鳳眼に同じ、 眼形細長、 眼幅に比して長さ五倍以上」 「玄齢(げんれい)は唐の人、 幼にして警敏年十八進士に挙げらる」 「大統賦には、 曰く、 房玄齢は龍目鳳睛、 位は三台に列すと」 「相に入るとは相格に入るといふこと也、 或る条件の相として具備する場合にいふ」 龍脳と鳳睛であった玄齢は、 立派な相の格に入っており、 相(しょう)に拝された。 相(しょう)とは大臣など天子を補佐する役職。 龍脳鳳睛ともに栄達の相。
〔流魄放海〕 (りゅうはくうみにはなたる)。 『流魄海に放たる、 水厄の災を防ぐべし』 「魄は白鬼、 鬼は気なり乃ち白気(はっき)。 海は大海は口の別名 乃ち口のこと也。 口角の付近に白気放流さるヽが如き状を見するなり、 これは水難水厄の相にて、 勿論海水浴 川渡りなど其の他水に近づくことは宜しくないが、 一杯のコップの水に噎(むせ)び或は窒息して死ぬこともあり、 また毒を呑みて死ぬこともある、 それも水毒水厄水難の内である」 黒い気色であっても同じく水難の相。
〔陵骨高起〕 (りょうこつこうき)。
〔両唇不遮牙道〕 (りょうしんのがどうをさえぎらざる)。 『是を引き非を招くは、 蓋(けだ)し両唇の牙道を遮らざるに謂ふ』 「(是を引き非を招くとは)他の陰口も聞き妄りがはしき風評もするか、 また他からも兎角悪口を言はれ評判良しからぬ也」 「牙道は門牙の道、 乃ち前歯前面のこと、 人中短かきか上唇縮むか、 俽(ま)き上がりて常に前歯を露出するものは、 口からボロを出す傾向があると也」 牙道は前歯。 唇が前歯を遮(さえぎ)らない、 つまり何時も歯が見えていること。 内外のいらん事を言い、 また言われもする。
〔両眉頭生青気〕 (りょうびとうにせいきしょうず)。 『文滞り書難は、 両眉頭に青気を生ず』 「文滞書難は出世上達せぬことの形容、 百三十部位の輔角は眉頭付近なれども、 必ずしも眉頭とは限らず、 コゝにいふは両眉頭の肉地の昏暗の色見ゆるをいへるまで也」 両方の眉頭に青い色が現れている人は、 どうも出世が出来ない。 眉頭は印堂の左右にも当るから、 ここに青色だけでなく暗い色があれば目的を達成できない相となる。
〔両耳薄反〕 (りょうみみうすくかえる)。 『両耳薄くして反(そ)りかえるは、 子を剋して終に成るの日なし』 「左右両耳ともソリ反りて且つ薄いのは、 子を剋するしまた一生成功する日とてもない」 耳が薄く郭が輪より出て反り返っていること。
〔両目雌雄〕 (りょうもくにしゆうある)。 『両目に雌雄あるは、 必らず富めども詐り多きを主どる』 「左右の目裂に大小不同ある也。 大小雌雄眼の名あり、 その人必要なき秘密性あり、 また他人を利用せんとする傾向あり、 必らず富み且つ金銭に不自由せぬ身の上にても、 詐ること多く多を害する也」 目裂は眼の開き具合、 間の大きさ。 目立って左右の目に大小があるのを雌雄眼と云う。
〔両目無神〕 (りょうもくむしん)。 『両目に神なくば、 縦(たと)ひ鼻梁高くとも齢亦た促る』 「両目は左右の目、 左右の目供にその光に生気なき如(ごと)きは、 たとひ鼻高しと雖も長寿というわけには行かないと也。 鼻高きは健康保強の相。 それでも眼神がなければ病弱であり、 自然、 中年で死ぬることがあろうと也」 鼻梁(びりょう)は鼻筋のこと。 齢促(よわいせまる)命が短いこと。
〔輪〕 (りん)。 耳輪。 耳の縁を輪と云う。