人相術辞典【い】

『人相術辞典・天童観相塾より』

【い】

〔威義〕いぎ。 虎が山を下る時や、鷹が空中を飛ぶ時には、百獣や鳥たちがその威厳に恐れおののく。 それが威である。 怒っているのではないのに威厳がある。 人相を見る時には、但に眼に威厳があるかどうかだけでなく、顴骨(けんこつ・頬骨)の神気というものを観なければならない  神気には体神、面神、眼神の三神がある。 身体から溢れる力、顔付きに力があること、眼光に力があること。 神気とは生命力、運命力などの力を言う。 顴骨の神気とは顴骨に力があること。 

〔異相〕いそう。 一般と異なる相。 異常な相。 珍しい相。 特別に良い相。 

〔頂突頭円〕頂き突し、頭は円。 僧侶で頭の頂きが盛り上がっており、頭全体に円味(まるみ)があれば、大師(だいし)の号を授かるであろう 頭の頂天が高く突し、その他頭部全体に円(まる)い者は、必ず師号を頂戴する様になるだらう 頭の頂天とは頭の中程のこと。 弘法大師がよい例で、孔子も高かったと言われている

〔一指頭大〕いっしとうだい。 指の先の腹で押した位の範囲。 顔面の部位を知るとき、測るときに使う言葉。 部位の広さにより、親指の一指頭大と、他指の一指頭大との区別がある。

〔色緊肉実〕色緊しく肉実する。 色が緊(きびしく・引き締まって)肉が実する子供は、養うに虞(おそ)れなし  色とは色のみではなく形質をいう、形質が引き締まって肉が実する、乃ち堅肥りの子供は生死についての、心遣いなどなくまことに育て良い。 虞れなしとは心配なく育つこと。 実とは虚の反対  陰陽で言えば実は陽、虚は陰。 締まるは陽、弛むは陰。

〔色黒縦於耳前〕色黒く耳前に縦ゆく。 黒い色(気色)が耳の前に縦に流れると、もうすぐ死ぬだろう  耳前(じぜん)は耳の前で、命門(めいもん)の部位。 ソコに黒い気色が縦形に流れたように現れたら、もう死んだも同然だ  死相の一つ

〔色慘神枯〕色は慘にして神は枯れる。 顔色は慘(いたましい)として、眼神は枯れている。 どうして出世できようか  気色が惨憺(さんたん)たる有様であり、眼神(がんしん)も面神も枯れ枯れの様ならば、開運の見込みはない 顔色がくすんで眼光に力がなければ出世は覚束ない。 その日暮らしの者に多い。 顔の肉が浮腫(むく)んでいるのも力なく痩せているのも同じく虚の状態である。 運命も虚(きょ・むなしい)である

〔色若祥雲〕色祥雲のごとき。 顔色が祥雲のようであれば、これからの運命は順調で安泰である  紅黄の気が湧くように現れるのを祥雲と形容したもの。 そのような顔色ならば前途は洋々として安泰に出世上達するだろう 紅黄は明るく冴えた色で、皮膚の下から湧き上がるように見える。 皮膚の色は現在の運命を表し、皮下の色はこれから皮膚の上に現れ出る、これから先の運命を表している。 

〔陰隲〕いんしつ。 涙堂(るいどう)は眼頭の下部の一点、陰隲はその涙堂より顴(けん・ほおぼね)の正面を斜行に見る一寸ばかりの区域 陰隲堂の略名。 陰隲とは陰隲とは陰徳を積むこと。 『陰隲紋』参照。

〔陰隲肉満〕陰隲の肉が満つる。 陰隲の肉が豊かに満ちるのは、心が霊(あきらか)なり 涙堂は眼頭の下部の一点、陰隲はその涙堂より顴(けん・頬骨)の正面を斜行に見る一寸ばかりの区域、正しくは一寸三分だが、顔が小さい人はそれなりに考えること。 そこを陰隲堂という。 陰隲は陰隲堂の略名。 その部位に顴骨の下に向かって斜紋があるのを陰隲紋という。 その所に凹陥があるのは貧賤の家の出であり、運は宜しからず。 陰隲とは易経にある文であって、陰徳を積むことを言う。 心霊(こころあきらか)とは、賢くて心が良いこと  眼下の骨の無い所、涙堂も陰徳の有無を見るところであり、色良ければ徳が子孫に現れ、色悪ければ不徳が子孫に伝わる。 涙堂は子供運を見る急所に当たる。 徳不徳は子孫に伝わるという証拠ともなる。 陰隲堂は広くいえば涙堂のこと。 

〔陰隲紋〕いんしつもん。 目頭の下部から顴骨の方へ斜めに走る紋  陰隲とは易の文にあって、陰徳を積むことを言う 養子紋とも云う。 男子は婿養子に行くか、婿養子のそのような立場になり、女子は跡取りに嫁ぐか義父母の世話をするような運命の者が多い。

〔陰相〕いんそう。 陰気な相。 身が肥えて肉が多く重々しい女は、陰相を得たもので、反って栄華がある  女で肥え太って身が重いようにヨチヨチと歩く姿、そのものを陰相と名付ける。 陰相の女は、中年以降に後家になってから却って栄華な運命になるだろう この例も多い。 後家とは亭主と生別か死別すること

〔印堂〕いんどう。 眉間のこと。 命宮とも希望宮とも言う。 現在の運命、心の明暗、心持ち、希望の有無と正否、運命の出入りなどを判定する、上停と中停にまたがる、部位中の重要部位。

〔印堂喜気〕印堂に喜気ある。 印堂に喜気あるは、謀(はか)りごと通ぜざる無し  喜気は紅紫黄気の綺麗な明るい色、それが印堂にあれば謀(計画)を立てれば必ず通達する  印堂は眉間で希望宮であり、希望が叶うかどうかを判定する所。 そこが光明であれば思う事が必ず叶う相。 紅紫黄気とは紅色でも紫色でも、明るく冴えた色のことをいう。 少しでも濁っておれば割引となり、凶色であり望みは叶わない。

〔印堂太窄〕印堂のはなはだ窄き。 印堂の太(はなはだ)窄(せま)きは、子は晩く妻も遅し  印堂が太だ窄いというのは、眉と眉が迫って眉間がむさ苦しく見えること。 両眉頭が相迫って印堂の部位がせまくなるとか同所の肉隆く盛り上がるのをいう。 太は眉形の太い意味もあり。 其の人は狭量で頑固であり大抵は小者である  結婚するのが晩(おそ)く子供も遅い相。 眼光がキツイと短気、寂しいと孤独、クセがあれば偏狭で何れも独身で通す者が多い。 目に和気があればその限りではない。 

〔印接中正〕印の中正に接する。 印堂と中正が盛り上がって接するのは、官に利あり  印とは印堂のこと、印堂が平で広い意味合い、印堂は中正の部位の下位接してある部位。 印堂の部位と中正の部位が肉付き良く連なって一つになっておれば、役人(公務員)になると良い  官吏が適職だという意味。 印堂は希望宮でもあり、肉付きが良ければ目上の引き立て目出度く運が強く、色が明るければ希望が通達する相。

〔陰陽〕いんよう。 易に対極あり、対極両義(りょうぎ・陰陽)を生じ、両義四象(ししょう)を生じ、四象八卦(はっか)を生ず と易経にある。 森羅万象は陰と陽の相対関係にあるとする。 少し例を挙げれば、(陽)天日明大暖清動出進善栄盛吉富貴主 奇数 神 天津神 この世 男 父・・ (陰)地月暗小寒濁静入退悪枯衰凶貧賎従 偶数 仏 国津神 あの世 女 母 妻・・  人相にも運命にも全てに陰と陽があり、人相においては眼を日月の陰陽に配する  男は本人の左が陽、右が陰。 女は右が陽、左が陰。 更に左右を三陰と三陽に分かつ。 顔の正面を陽面、側面を陰面。 身体の正面を陽、背中を陰。 職業にも表方と裏方の陰陽があり、人相にも陽相(陽気、明るい、活動的など)と、陰相(陰気、暗い、寂しいなど)があり、陽相は陽職が適し陰相は陰職が適するなど、陰陽の原理原則は全てに応用される。

〔陰陽眼〕いんようがん。 眼形は一定せず種主々の形状がある、眼球の左右大小あるを陰陽眼という  左右の目に目立って大小があるのを陰陽雌雄眼という  目に雌雄があるのは、富むけれども偽りが多い人物である  目を日月父母に象(かたど)るので、目に雌雄がある人は親に縁薄いことが多い。 眼光に和気があれば心に毒はないと判断してよい 『雌雄眼』の項を参照

〔陰陽明潤〕陰陽の明潤。 陰陽の明潤(めいじゅん)なる(子供)は、男女(子供)は養い易くして聡明なるを得ん  陰陽は左右の眼そのもの也。 眼が明潤であれば男女の子供がよく聡明に出来上がると也 眼は眼の回り、眼光、眼付きなどの全てをいう。 子供が順調にスクスク育つし、そして聡明な子供である。